土偶を読む 130年間解かれなかった縄文神話の謎
2022-04-15


竹倉史人 <晶文社・2021.4.24>

 いろんな人が絶賛評価しているそうだが、噂に違わぬ素晴らしい本。土偶は食用植物を造形したフィギュア、という全く新しい仮説を提唱し、9種類の土偶についてそれぞれ丁寧に検証していく。書き方は科学論文と基本的に同じで、写真や図形を用いた造形の比較(イコノロジー)だけでなく、植物や貝類が見つかる遺跡の時期や場所その他、様々な角度からの裏付けをとっていて、少なくとも素人に対して説得力がある。言われてみれば確かにその通り、という「コロンブスの卵」の印象を受け、この仮説が否定されるとは思えない。是非、考古学の専門家の意見を聞きたいところだ。教科書に載るようになるのに、どれぐらいかかるのだろうか。
 著者の竹倉は美大を中退した後、東大で宗教学・宗教史学科を卒業し、さらに東工大社会理工学研究科博士課程を満期退学した人類学者というが、美学、宗教学の素養が生きた研究成果。未だ博士の学位は持ってないようだが、サイエンスの基本はしっかりしていると感じられた。今後の課題として、仮説に合わない例を探して検討した結果の提示(ダーウィンのように)まで求めるのは望み過ぎか。
1. ハート型土偶: オニグルミ(胡桃)
2. 合掌土偶・中空土偶: くり(栗)
3. 椎塚土偶(山形土偶): はまぐり
4. みみずく土偶: イタボガキ(牡蠣)
5. 星形土偶: オオツタノハ(笠貝類)
6. 縄文のビーナス: トチノミ(栃の実)
7. 結髪土偶: イネ(稲)
8. 刺突文土偶: ヒエ(稗)
9. 遮光器土偶: サトイモ(里芋)
 尚、「はまぐり」は「浜栗」という定説のように、縄文人は貝類を植物の仲間と考えたらしい。
[読書]

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